夏のお弁当の注意点!調理師が教える食材選びと傷まない工夫【必見】

夏のお弁当の注意点!調理師が教える食材選びと傷まない工夫【必見】

気温や湿度が高くなる夏は、食材が傷みやすく、食中毒の発生が増える季節です。特に、調理してから食べるまでに時間がかかる場合、食中毒のリスクが高まります。そこで、今回は夏のお弁当作りで注意したいポイントと、おすすめの食材選び、傷まないおかず作りのコツなどをご紹介します。

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夏のお弁当が傷みやすい理由と対策

夏のお弁当が傷みやすい理由と対策

食中毒の原因となる菌の多くは、20~40℃前後で活発に増殖します。日本の夏は気温が高く湿度も高いため、菌が繁殖しやすくなり食中毒のリスクが高まります。特に、お弁当は作ってから食べるまでに時間がかかるため、菌が繁殖しやすく傷みやすい環境です。


菌は「温度・水分・栄養分」の3つの条件がそろうと、活発に増殖します。お弁当を作る際は菌が好む水分や栄養分を与えないように衛生面に気を配りましょう。食べるまでの時間は適切な温度で管理することで、夏場でもリスクを減らすことができます。

食中毒菌の繁殖環境

気温や湿度が上がる夏場は、食中毒に特に注意が必要な時期です。ここでは、家庭で気をつけたい食中毒菌について詳しく見ていきます。


代表的な菌にはサルモネラ菌、カンピロバクターなどがあります。菌の多くは、20~40℃程度の環境で最も活発に増殖します。冷凍しておくと増殖速度は遅くなりますが、死滅することはありません。室温に戻すと増殖を開始するため注意が必要です。夏場は室温に放置すると、2~3時間で増殖し、食中毒を引き起こす危険があります。


ボツリヌス菌のように、酸素のない環境でのみ増殖する菌も存在します。そのため、真空状態であっても一部の菌が増殖する可能性があることを知っておくと、より安全な保存につながります。また、真空状態でも、衛生的な環境で食材を保存し、生鮮食品や調理後の食品は冷蔵や冷凍するなど、適切な保存方法を心がけることが大切です。

傷みやすい時間帯と温度

気温が20℃を越える時間帯は特に注意が必要です。夏場は朝から20℃近くに到達することもあるので、持ち歩く際は特に温度管理に注意しましょう。


気温が上がりやすい季節は、お弁当自体の温度が上がらないよう、持ち歩く前に十分冷ましたり保冷剤を添えたりするなど、工夫して温度管理をすると安心です。

避けるべき夏のお弁当食材

避けるべき夏のお弁当NG食材

●生野菜・果物

加熱していない生野菜や果物は、水分が多く傷みやすいです。彩りとして入れたいときは、炒めたり焼いたりした野菜を入れるとよいです。


●半熟卵

半熟卵はサルモネラ菌の増殖が起こりやすいため、必ず中までしっかり火を通しましょう。


●混ぜご飯

具材や調味料の入った混ぜご飯は、傷みやすいため夏場のお弁当には向きません。味付けご飯にしたいときは、ふりかけや海苔を別添えで持参するのがおすすめです。


●煮物

水分の多い煮物は、時間がたつと菌が繁殖しやすい傾向があるため、夏のお弁当には向きません。どうしても入れたい時は、濃いめの味付けにしたり、煮切って煮汁を飛ばしたりといった工夫をするとよいです。

水分の多い食材とその影響

野菜や果物のように水分の多い食材は、菌が繁殖しやすく、特に夏場は短時間でも傷みやすいです。夏は、レタスやトマトなどの生野菜は注意が必要です。加熱して食べる野菜炒めも、もやしやキャベツのような水分の多い野菜で作ると、時間が経つと水分が出やすいので、水分の少ないにんじんやピーマンなどで作るとよいでしょう。


水分の出やすいほうれん草やキャベツなどは、茹でて水気を絞ってから調理すると水分が出にくくなります。炒めたり和えたりした後に、かつお節やすりごまなど水分を吸い取ってくれる食品を合わせる方法もおすすめです。


お弁当箱の底に余分な水分が溜まったりすると、他のおかずを傷めてしまう心配もあるため、水分の多い食品は工夫をして詰めるようにしましょう。

夏でも傷みにくい!おすすめのお弁当おかず

夏でも傷みにくい!おすすめのお弁当おかず

夏でも傷みにくいおかずをご紹介します。傷みにくい食品や傷みにくい調理方法を選択すると安心です。


●殺菌作用のある食品を使ったおかず

殺菌作用のある梅干しやお酢を使ったおかずは、夏のお弁当におすすめです。蒸した鶏肉を梅肉で和えたり、揚げた魚を南蛮酢につけたりすると、傷む心配が少ないおかずができます。


●味付けの濃いおかず

いつもの味付けより濃いめに作るのも、傷まないおかず作りの鉄則です。塩分や糖分の濃度を高くすると、菌の繁殖を防いで日持ちするおかずができます。きんぴらごぼうや漬け物などは、濃いめの味付けにして詰めるとよいです。


●中までしっかり加熱できる揚げ物

お弁当の定番おかずである唐揚げや天ぷらのような揚げ物は、高温で中心までしっかり加熱するため、傷みにくく夏のお弁当におすすめです。

唐揚げのレシピはこちら>

加熱済み肉料理の保存法

唐揚げやとんかつのような高温で調理した肉料理は、煮物や炒め物に比べて水分が出にくく、傷む心配が少ないおかずです。お弁当にも詰めやすく人気のあるおかずですが、忙しい朝に揚げ物をするのは大変です。


作り置きをする場合は、加熱後粗熱を取り密閉容器に入れて冷蔵庫で保存します。日持ちさせるコツは、空気に触れないようにすることです。小分けにしてラップに包むか、真空保存容器で保存するのもおすすめです。


保存・保管に適した温度は、冷蔵庫の一般的な温度である4℃以下が望ましいとされています。4℃以下であれば、腐敗を起こす菌の繁殖が抑えられます。

食中毒予防に効果的な調理のコツ

お弁当を前日の夜に詰めるメリット

食中毒を予防するために、調理中はいくつか気をつけておきたいポイントがあります。


●食品は中までしっかり加熱する

菌の繁殖を防ぐために、お弁当に入れるおかずは中心までしっかり加熱します。そのまま食べられるハムやちくわなどの加工食品も、夏は加熱してから詰めると安心です。


●食品を素手で触らない

人の手には、たくさんの菌が付いています。手を洗って清潔に保ったとしても、菌が付いてしまう事があるので、お弁当を詰める際は、必ず菜箸やトングなど道具を使って詰めてください。


●しっかり冷ましてから詰める

おかずやご飯を温かいまま詰めると、お弁当箱に水滴がついて傷みの原因になります。お弁当を作る際は、冷ます時間も考慮に入れて調理するようにしましょう。

衛生的な調理器具の使用

食中毒を予防するために、調理器具の衛生管理も重要です。包丁やまな板は、野菜用・肉用など用途によって使い分けると安全性が高まります。使用後は置きっぱなしにせず、すぐに洗剤を使用して洗浄します。最後に、熱湯か塩素系漂白剤で消毒するとよいです。


お弁当箱や保存容器に付属しているパッキンは、必ず毎回外して洗います。パッキンの部分にある隙間は、汚れが溜まりやすく菌が増殖しやすい箇所です。細い溝の部分も、ブラシなどを使用して擦り洗いをし、清潔な状態を保つ必要があります。煮沸消毒をするのもおすすめです。

夏のお弁当の正しい保存方法

夏のお弁当の正しい保存方法

作ってから食べるまでに時間のかかるお弁当は、傷まないように温度管理を徹底する必要があります。菌が増殖しやすい20℃以上にならないよう、おかずやご飯は十分冷ましてから詰め、保冷剤や保冷バッグを使用して、低温を保ちましょう。


調理したおかずやご飯は、お弁当箱に詰める前に広げて冷まします。熱々のまま詰めてしまうと、冷めるまでに時間がかかってしまうので、皿やバットに広げて冷ますと時短につながります。風通しの良い場所に置いたり、一時的に冷蔵庫に入れて急速冷蔵する方法もおすすめです。


お弁当箱に詰めたら、保冷剤をのせて保冷バッグに入れます。気温の高い部屋ではなく、冷房の効いた部屋や冷蔵庫での保管が望ましいです。

持ち運び時の温度管理

お弁当を持ち運ぶ際は、お弁当の中身が20℃以上にならないよう十分注意してください。お弁当は、保冷剤と一緒に保冷バッグに入れて低温を保ちます。夏場は、保冷剤一つでは心配なため、お弁当箱の上下左右に複数個置いたり、冷凍したペットボトルを一緒に入れたりするのも有効です。


また、緩衝材のエアクッションは外気を遮断する効果があるため、保冷剤とお弁当箱をエアークッションで包んで保冷バッグに入れるのも、傷まない方法としておすすめです。温度が上がらないよう持っていき方を工夫することで、夏場も安心してお弁当を持ち運ぶことができます。

プロ直伝!夏のお弁当の衛生管理術

お弁当を前日の夜に詰めるメリット

食中毒を引き起こす菌は、20~40℃程度の環境で増殖しやすく、危険が高まります。そのため気温が上がる夏場は、お弁当の調理方法や持っていき方など、衛生管理に十分注意する必要があります。


調理を始める際は、手を石鹸でよく洗ってから開始しましょう。包丁やまな板などの調理器具は、使用後は速やかに洗剤で洗い、熱湯や塩素系漂白剤で殺菌消毒すると安心です。

お弁当箱も、持ち帰った後はすぐに洗って乾かして清潔な状態を保ちましょう。ゴムパッキンのような外せる部品は全て取り外して、丁寧に洗うのが食中毒を予防するコツです。

夏のお弁当に関するQ&A

夏のお弁当に関するQ&A

夏のお弁当について、よくある質問をまとめました。


Q.夏のお弁当に向かない食品は?

A.生野菜・果物・汁気の多いおかず・半熟卵・加熱していないハムやかまぼこなど


Q.お弁当におすすめのおかずは?

A.殺菌作用のある、梅干しや酢を使ったおかず

水気の少ない揚げ物などのおかず


Q.ご飯に梅干しをのせると安心?

A.梅干しの周りしか殺菌効果がないため不十分。細かくたたいてご飯全体にのせるか、混ぜるようにするとよい


Q.夕飯の残り物を入れてもよい?

A.食卓に並べたおかずは、菌が付着している可能性があるため避けた方がよい。お弁当に入れる場合は、予め取り分けておく


Q.お弁当の保存可能時間は?

A.手作りのお弁当は、一般的に6時間以内に食べ切るのが望ましい。ただし、調理方法や保管状況に左右されるため、できるだけ早めに食べ切るとよい。

料理研究家/調理師・食育インストラクター

馬原 香織 監修



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